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J.POSH SQUARE 9号

 

乳がん患者さんのキュアとケア

認定NPO法人 J.POSH(日本乳がんピンクリボン運動)
理事長 田中完児

 

日本における乳がんの医療現場では、20世紀までは主に体の病気を治すことが最も重要視され、患者さんが体に負ったのと同じようなこころの傷に対しては見過ごされる風潮が当然のようにありました。命が助かればあとはどうでもいいといった風にです。

 

でも、実際のところ、こころの病は目に見える肉体の病気の治療ほどそう簡単にはいかないものです。つまり、ここに来て医療者があらためて気づき始めたことは、病気は心と体の両方を蝕(むしば)むものであること、ですからその両方を治し(キュア;Cure)かつ癒す(ケア;Care)ことが本当の医療なのだということです。

 

乳がんの領域でこのケアを充実させる方法の要(かなめ)がチーム医療です。チーム医療はいろいろな職種(例えば、乳腺専門の医師、看護師、薬剤師、理学療法士、放射線技師、など)の方が一丸となって患者さんを中心に医療を進めようというものです。チーム医療という言葉は正式には海外ではMultidiscplinary Treatment(日本語に直訳すると集学的治療)といいます。

 

患者さんの不安や心理状態を把握することは大切なことです。チーム医療のメンバーはそういった患者さんの気持ちをしっかり理解し的確に対処(ケア)しなければなりません。例えば、患者さんの不安な心理状態は、自分の乳房に症状を認めた時点からすでに始まっています。その後も、外来を受診し診察を受けた時、検査結果が判明するまで、癌と告知を受けた時、手術を受ける前の麻酔に対して、手術自身の成否に対して、術後の合併症に対して、手術の病理結果を聞くことに対して、退院後の治療(特に化学療法)に対して、退院後の社会復帰やボディーイメージに対して、夫婦生活に対して、手術後のフォロー中の定期検査の結果に対して、転移再発に対して、と不安は綿々とほぼ一生の長きにわたって続くものなのです。

 

ですから、患者さんの気持ちになってこころのケアを心がけることが、医療者にとって如何に大切なことであるかがわかっていただけるかと思います。でも医療者として最も大切で常に心がけなければならないことは、決して患者さんを“ひとりぼっちにしない”“置いてきぼりにしない”といったような“孤立感”や“疎外感”を持たせないようなという配慮(ケア)なのです。