• トップ
  • J.POSHとは
  • 活動紹介
  • 機関紙発行

ピンクリボンNEWS japan 7号(vol.3 no.1)

 

乳がん自己検診について

ブレストピアなんば病院 乳房腫瘍外科
古澤 秀実

 

「がん」という生き物

「がん」は、患者さんという生命体の中に発生した異種の生命体です。「がん」が何のために発生するのかはわかりませんが、生命体であるが故に数を増し(増殖)、移動してでも生き延びようとして(転移)患者さんの生命を脅かす存在へと成長します。変異の確率は加齢とともに高くなるので、有数の長寿国であるわが国において、「がん」(患者さん)の増加は自然なことで、国民病であることもよく理解できます。そして、決定的な予防法は見つかっていないのが現状です。

 

乳がんから生命を守る

乳がんは、ある時点に患者さんとご家族、そして私たち診療者の共通の敵として発見されます。その時点での大きさや転移状況による分類を病期(ステージ)と呼び、病期と予後(患者さんの将来の見通し)は大雑把には一致しています。しかし、多くの患者さんを診させていただいているとこれには当てはまらない患者さんも多くいらっしゃいますし、乳がんを退治するチャンスが決して一回限りではないこともよくわかります。病期分類は治療に直結しないとの理由から最近は軽んじられる傾向にありますから、ある程度病期が進んでいるからといっても決してあきらめるべきではありません。それでも、敵が数と生命力を増してくると一筋縄では行かなくなるのも事実ですので、やはり敵の数が少ない、すなわち患者さんの生命を脅かす可能性の低い、いわゆる早期に乳がん退治の最大のチャンスがあるといえます。

 

早期発見・早期治療、使い古されたこの言葉は、今でも至言というべき言葉です。私たちの敵である「がん」にとっては、多勢に無勢の戦いを挑まれたくはないはずですし、敵が無勢のうちに見つけ出して退治してしまおうという考えは、まことに理にかなっています。早期発見・早期治療によって死亡率を下げようとの試みが「がん」検診です。したがって、死亡率の下がらない検査を検診とは呼べません。検診は何の症状もない方こそが受けるべきで、症状のある方は病院を受診しなければなりません。乳がんでは、国内外の臨床試験の結果から、医師や患者さん自身による視・触診のみでは死亡率を下げることはできないとされてきました。そこで、指ではわからない小さな(早期の)乳がんを見つけ出すために、マンモグラフィや超音波を用いた画像検診の可能性が探られています。ところが、画像検診が本当に乳がん死亡率を下げているのかの評価に関しては、専門家の間でも見解がわかれています。画像検診には、撮影にも読影にも人間の熟練と機器の性能が判定を左右してしまうという問題点があると考えます。

 

自己検診は大切

では、一体どうすれば乳がんを早期に発見できるのでしょうか。そもそも検診の目的は死亡率を下げる(生存率を上げる)ことでした。したがって、死亡率の低い病期で発見できる方法があればほとんどの患者さんは助かるわけですから、その方法を検診に用いるべきです。当院のデータでは、リンパ節転移のないステージIIまでなら、手術から5年後で97%以上、10年後でも92%以上の患者さんがお元気でした。リンパ節転移のないステージIIというのは、最大の腫瘍径が触診で5cmまでを意味します。この患者さんたちの約65%の方が画像検診ではなく、ご自分で乳房の変化に気づいて来院されていました。さらに、これだと教えられればわかる方も含めると、80%以上の患者さんの指で感じることができました。このことから、自分で行う視・触診は乳がん検診の大切なひとつの方法であることがわかります。

 

時々、触ってもよくわからないから自己検診はしないという声を耳にします。確かにそうかもしれません。乳房の「しこり」という表現は大変曖昧です。それを言葉やイラストで何度説明されたとしても、乳がんを触ったことがなければその触り心地を想像することはできないでしょう。どのような方法でも構いません。①いつもと違ってないか ②左右で違ってないか ③乳房の薄い部分に腫瘤がないか 変化を探して、思い当たればすぐに病院を受診ください。私は、それで充分と考えています。難しく考えずに、早速今晩にでもチェックしてみましょう。