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ピンクリボンNEWS japan 16号(vol.5 no.2)

 

我が家はがん家系?~遺伝性乳がんを知ろう~

日本赤十字社和歌山医療センター
認定遺伝カウンセラー 秋丸 憲子

 

最近、様々ながんの話題を目にします。米国女優が、乳がんではないのに乳房を切除したという話題を記憶されている方もいらっしゃるでしょう。がんなんて他人事!と思っている方も多いと思いますが、日本では2人に1人ががんに罹患するので、家族に複数のがん患者がいることは特に珍しいことではありません。家族にがん患者がいなくても、誰でもがんに罹る可能性があります。

 

がんができる仕組みですが、日々の生活で様々な刺激(喫煙、飲酒、化学物質、食事、生活習慣などの環境要因)により、細胞(ヒトの体は多くの細胞からできています *注1)の中にある遺伝子が変化し、正常な働きができなくなることがあります。そのような変化が局所の細胞内に複数回起こり、体の一部分(例えば、大腸、胃、肺、乳房など)にがんが発生します。年齢を重ねるうちに沢山の刺激を受け、細胞内に遺伝子変化が蓄積するので、一般に、がんは高齢者に多い病気です。

 

家族は、環境や生活習慣を共有することも多いため、同じ種類のがんが複数の家族にみられる場合(図1 家族性乳がんと遺伝性乳がん)には、生活習慣(禁煙、バランスの良い食生活、適度な運動)を見直し、検診を心がけてください。

 

図1

 

一方、乳がんになりやすい体質を持って生まれ、乳がんに罹る方が乳がん全体の5~10%居られ、これを“遺伝性乳がん”と言います。遺伝性乳がんには多くの種類がありますが、その半数を占める“遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)”では、BRCA1またはBRCA2遺伝子に変化があります。遺伝性乳がんの場合、受精卵の時点(*注1)で、特定遺伝子(BRCA1、BRCA2など)に変化があり、この変化に加えて先に述べた環境要因による遺伝子変化が加わったとき、乳がんになります。遺伝性乳がんの特徴は、

 

①比較的若い年齢で発症する、

②同時あるいは異なる時期に複数の同じがん(多発・両側)、特定の多臓器のがんに罹ることがあります。また、

③家族に同じがんの患者が複数いる場合もあります。

 

②について、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)では、乳がん(特定遺伝子に変化がある方の40~90%が乳がんに罹患)、卵巣がん(10~60%)に罹りやすく、男性乳がん(1~10%)、前立腺がん、膵がん(1~7%)についても一般よりは罹りやすい傾向があります。

 

③を補足すると、変化したBRCA1またはBRCA2遺伝子が1/2の確率で子どもに伝わる(*注2)ので、母、娘、孫娘と、家族に複数の乳がん患者がいる場合があるということです。しかし、最近は少子化が進んでいるので、家族に乳がん患者がいなくてもBRCA1またはBRCA2遺伝子に変化がある場合もあります。

 

結局、遺伝性乳がんかどうかは、家族歴を見ただけでははっきりしません。遺伝子検査により確定されます。日本乳癌学会の診療ガイドラインでは、遺伝性乳がんのリスクの高いと考えられる方には検診などの対策を考えることとなっています。

 

遺伝性乳がんについて情報を入手したい、遺伝子検査を行いたい場合には、遺伝カウンセリングを受けてください。HBOCを含む遺伝性乳がんの情報だけでなく、検査をおこなうメリット・デメリット、検査結果を自分の人生にどのように活かすのか、遺伝子に変化があった場合の対応(検診プラン、リスク低減のための乳房・卵巣卵管切除術)などをについて、遺伝カウンセラーと一緒に十分考えることができます。自分がどの程度乳がんに罹りやすいかを評価し、遺伝性を疑う場合や家族に複数の乳がん患者がいる場合(環境要因の可能性もある)には、主治医に、検診開始時期(一般の方よりも若年の時期)や検診の種類(マンモグラフと超音波検査)、検診の間隔について相談し、しっかりと乳がん検診を受けてください。

 

 

*注1 ヒトの体は、たった1個の受精卵が細胞分裂(遺伝子などをコピーして数を増やす)し数十兆個まで増えた、様々な機能を持つ細胞からできています。受精卵の時点で遺伝子(体の設計図)に変化があると体中の細胞に変化があります。

 

*注2 ヒトの遺伝子は2万数千種類あり、ほとんどの遺伝子は、父由来遺伝子と母由来遺伝子の1個ずつ合計2個あります。HBOCでは、2個の遺伝子のうち片方(父方または母方)に変化があり、その結果乳がんに罹りやすい体質になります。これを“常染色体優性遺伝”と呼びます。2個の遺伝子のうち、1個を子どもに伝えるので、変化のある遺伝子を子どもに伝える確率は1/2となります。

 

参考:

HBOCコンソーシアム一般向け解説資料

がん情報サービス