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ピンクリボンNEWS japan 19号(vol.6 no.1)

 

病理医と乳がん

川崎医科大学         
 附属病院病院病理部 部長
 現代医学教育博物館 副館長
森谷 卓也

 

皆さん、こんにちは。今回は病理の立場から、乳がんについて述べさせていただきます。おそらく、多くの皆さんは「組織型」「グレード」「ER, PgR」「HER2」「Ki-67」などの話をお聞きになられたことがあると思います。今回はそのような医学的な解説ではなく、病理の検査と、病理の医者のお話です。

 

病理医の資格は、外科、放射線科、精神科、等と同じように医師の専門家として認められています。医師になってから一定の研修を行って、専門医試験に合格して病理専門医として認められるのも、他の科と同じです。しかし、決定的に違うのは、病理医は患者さんと直接お話をする機会がほとんどない事です。私自身も、患者会や、本号の他のところで述べさせていただく博物館の仕事で皆さんとお話しする機会はありますが、普段の仕事(本業と申しますか、、、)では患者さんのお名前は知っていても、お目にかかる事がございませんので、お顔は全く存じ上げません。

 

病理医は、患者さんの細胞や組織を顕微鏡で見させていたがだくのが主な仕事です。乳がんであれば、がん細胞を見つけてその患者さんが「がん」であることを主治医に伝えます。顕微鏡標本は臨床検査技師さんが作ってくれます。彼らの中には「細胞検査士」の資格を取って、細胞診検査で病理医と一緒にがん細胞を探す仕事をされている方もいます。技師さんの力も、病理検査にとってはとても重要です。

 

乳がんの「組織型」「グレード」「ER, PgR」「HER2」の状態は、患者さんごとにさまざまです。10人の患者さんがおられれば、10通りの乳がん細胞の形があると申しても言い過ぎではないと思います。毎日顕微鏡を覗いていますと、患者さんのお顔は知らなくても、細胞を見ると、「ああ、あの方だ」と思うことは決して少なくありません。

 

私たちに求められるのは「正確な診断」です。具体的には、乳がんであることの確定、がん細胞の性質を見極めること、手術でがん組織が十分切除されたか確認すること、くすりや放射線治療の効果が得られているか調べること、などがあります。内容は、医学の進歩によっても変わってゆきます。例えば、乳房部分切除術が行われるようになってからは、切除したところにがんが残っていないか手術中に迅速検査を行うようになりましたし、センチネルリンパ節検査も導入されました。「ER, PgR」「HER2」などの検査結果は、術後に投与するくすりの種類を決めるための資料として、とても重要です。このような検査結果を、主治医の先生から患者さんに伝えていただくことによって、おひとりおひとりに最も適切な、なおかつ納得していただける治療を受けていただくことが私たちの使命であり、願いでもあります。

 

最近、病理医の中には「病理外来」を設けて、その病院で手術を受けられた患者さんで希望される方に病理検査結果の説明をする方も出てきました。実施している施設はまだ少数ですが、そのような取り組みが行われてることを知っておかれるのも良いかもしれません。