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ピンクリボンNEWS 23号(vol.7 no.1)

 

乳がん術後のサポートのあり方

旭川リハビリテーション病院
理事長
進藤 順哉

 

乳がんは患者さんが増加しているばかりではなく、転移しやすいがんと言われています。私はリハビリテーションの専門医で、乳がん術後に腕が上げづらい、むくみやしびれがある患者さんの治療の経験があります。しかし乳がん術後のリハビリや,術後のケアに関してはインターネットで検索すると多くのサイトがありますので、今回は妻の乳がんとのかかわりの中で感じた事をお話させていただきます。

 

妻、麻紀子は世界7大陸9つの最高峰の登頂をめざしています。残りはあと2峰で、来年の5月のエベレスト登頂で完了となります。ピンクリボンNEWSに2度ほど寄稿させていただいていますのでご存知の方がいるかもしれません。

 

以前より乳房に石灰化した部分があり、旭川医大の乳腺外科で経過観察をしていましたところ、2015年12月に変化があり乳癌と診断されました。翌年1月から南米最高峰アコンカグアの登頂を予定していたので医師と相談し2月の手術となりました。その時に妻から癌になるのだったらもっと早く石灰化の部分を切除した方が楽だったのではないかと言われました。私は癌にならない場合もあるし、病理診断で悪性と判断されてから手術が出来るので難しいと言いました。しかし良く考えると彼女の考え方も一理あると思います。手術の結果は、見張り番リンパ節ともいわれる、センチネルリンパ節の転移はなく早期の乳がんでした。部分切除で術後の経過もよく早期に退院しました。退院日食事に行った時、いろいろ質問してくるので、早期だからラッキーで何も問題ないと言ったところ。涙を流しながら落ち込んでしまいました。医師は早期発見した患者さんに「早期なので運が良かったね」と良く言います。乳がんは乳房付近に血管とリンパ節が多く集まり転移しやすいので、早期胃がんのように切除して根治にはならないのです。さらに変形した傷跡に絶望感をもたらしたようで、私は術後の精神的不安に対して配慮が足りませんでした。術後の放射線療法を東京の済生会中央病院で行いました。すでにトレーニングを再会したので短期型の治療を選びました。手術後は無理をせず普通の生活をしてくださいといわれたようですが、彼女の普通の生活は一般的な人とは比較にならない運動量です。私は痛みや、むくみが悪化しなければ制限はないとアドバイスしました。放射線治療の副作用はありませんでした。しかしその後のホルモン療法はやっかいな問題が次々と出て来ました。ホットフラッシュといわれる体温調節が出来ず身体が熱くなる。睡眠時にほてりでなかなか熟睡できない。気持ちの動揺、不安もありました。更年期には女性ホルモンが徐々に低下して起きる自律神経障害があります。今回のホルモン療法は、強制閉経による自律神経障害であって40代の女性にとってほんとうに辛い事が多いです。さらに副作用を胸部外科、産婦人科の先生に相談しても明確な治療方法がないという。確かに私が診察した乳がん術後の患者さん達も、腕が上がらない、むくむ事をどの医師に相談したらいいかわからなかったと言っていた事を思い出しました。手術して命が助かったのだからという医師側の気持ちがあるのかもしれませんが、術後フォローアップ体制はまだ充分とはいえません。インターネットで乳がんの体験を探したようですが、軽症の方の体験は少なかったそうです。

 

東京の慶応病院の漢方外来で漢方治療をしてもらう事になり、いろいろな漢方を試してみました。最初のころは自立神経障害に処方される、桂枝茯苓丸(25番)加味逍遥散(24番)女神散(67番)を服用しましたが効果はあまりなかったです。現在は免疫力を上げたり、体力上げたり、疲労を回復するために五苓散(17番)  補中益気湯(41番)、抑肝散(54番、)を服用しています。漢方の先生は診察というより妻と山話をする機会が多く、結果的に心理療法的な効果があったかもしれません。そのほか大塚製薬のエクエルというサプリメントを服用しています。しかし妻の一番の治療は山に登るという前向きな目標を持って毎日身体を鍛える事だと思っています。

 

乳がんの患者さんから教えられた事は、精神的なサポートが最も大事だという事です。医師という立場やがん患者を診た経験は必要ですが、時として逆効果もあるという事も感じました。私の病院や施設の職員の多くは女性です。早期発見の重要さをさらに啓蒙しなければならないと思いまいます。さらに乳がんが見つかったら患者さんや家族への精神的なケアも含め、適切なサポートをしていかなければいけないと考えています。

 

最後になりますが、ピンクリボン運動が益々発展する事を心から願っています。