- J.POSH SQUARE
11号
乳がんの手術の変遷について
乳がんの治療というとやはり手術を一番に想像します。そのとおり乳がんの手術は治療のひとつです。
でも、乳がんの場合は他のがんと違って手術のほかに放射線治療や薬物治療も非常に大切です。がんの中には手術の成否がほぼ患者さんの生存率に比例するものもありますが、乳がんの場合は少し違っていて、手術はむしろ(全例ではありませんが)局所のコントロールという意味あいが強く、生存率に一番影響を与えるのはむしろ術後(時として術前)の薬物治療です。
そんなわけで手術の方法はいろいろと変わって来ました。近代の手術に一番影響を与えた人は1890年代に乳がんの根治手術法を発表したアメリカ人のハルステッドとドイツ人のメイヤーという人です。彼らの手術法は乳がんをリンパ節を含めて大きく取れば取るほど治癒すると考え、乳房すべてと胸の筋肉(大胸筋、小胸筋)と取れるだけのリンパ節を取るというものでした。
これは1980年まで約100年の間行なわれ続けましたが、冒頭でもお話しましたように乳がんの手術は極端な話、病巣され取り残さなければ乳房を大きく取ろうが小さく取ろうが生存率とは関係ないことがわかり、適応基準を満たせば乳房を残すことが可能になりました。
また、リンパ節も現在のところでは最初から腋のリンパ節が手で触れない場合は、転移しそうなリンパ節を一個調べてもし転移がなければリンパ節を取らないという時代になりました。さらにこのような経緯から推測すれば、遠くない将来乳がんは手術せず薬で治す時代が来るでしょう。
最近では、乳がんに対するワクチンも発明され、実験レベルで成功しています。このままうまくいけば子宮頸がんのワクチンによって子宮頸がんの8割近くが治るといわれているように、乳がんも治る時代が来るように思えます。
認定NPO法人 J.POSH(日本乳がんピンクリボン運動)
理事長 田中完児