“胸(おっぱい)が腫れて痛い”ってひそかに悩んでいる男性が多いことを知っていますか?(女性化乳房のお話)
みなさんの記憶のなかにもあると思うのですが、小学校の低学年のころまでは女の子も男の子も胸(おっぱい)が小さくって見分けがつけられません。でも小学校の高学年ころから体のいろいろな部分に変化が起こってきて、胸もはっきりと違いがでてきます。この理由は思春期の体のなかでホルモンのおおきな変化が起こっているからです。
女性では女性ホルモンが急速に増えて胸が房(ふさ)のように大きく成長してゆきます。逆に男性は男性ホルモンが増えて胸が大きくなることは普通ありません。でもこんな時、女性ホルモンと男性ホルモンの増えるタイミングが少しずれたりすると、男性でも女性ホルモンが一時的に多くなる時があります。
これが原因で胸が大きく腫れてきて、下着に擦れるだけでも痛むことがあります。程度のひどい人は女性のような乳房のふくらみ(Cカップサイズ)ができる人もいます。また、乳頭部が痛くて困っている場合も結構あります。通常は数か月~2年までに消褪しますので放っておいても自然に治ります。
でも、困るのは若い男性は夏に上半身裸になることが多く、みんなに好奇の目で胸を見られるのが嫌でどうしても切除してほしいと言ってくる人もいます。このような症状がみられる疾患を女性化乳房(男性の乳房が女性化してしまう)と呼びます。
人間には一生のうちには肉体上いろいろな時期がありますが、ホルモン環境が急激に変化するのがこの思春期と中年期(45-64歳)です。この思春期と中年期に男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが崩れて胸が腫れたり痛んだりするひとが結構います。これは人間の肉体に自然に起こるものですので生理学的女性化乳房として分類されます。
でも、胸の腫れと痛みを訴えることが多いのは、実は思春期以降の男性です。これははっきりとした原因を持っている人が多いのです(病的女性化乳房)。その中でも一番多いのは、医師から処方されている薬の副作用です。(ちなみに副作用の中で女性化乳房の頻度はそれほど高いものではありません。)みなんさんが日常でよく耳にするものでは、高血圧のくすり(降圧剤)、胃潰瘍胃炎のくすり、吐き気止め、精神安定剤、睡眠薬、などなどです。そのほかの原因には、甲状腺の異常、肺結核、肝臓の疾患、糖尿病、睾丸腫瘍、副腎腫瘍、下垂体腫瘍、などがあります。
正常な男性の体では男性ホルモンの量が大多数で、女性ホルモンが微量に産生されます。そしてそれは通常肝臓で分解され体外へ排泄されます。女性化乳房は男性の体内で女性ホルモンが過剰に蓄積することが原因となります。例えば、肝臓の機能が低下するようなこと(過度の飲酒=飲みすぎ)をすると女性ホルモンが十分に分解されないため体内に過剰に蓄積し胸が腫れてくることにもなりかねません。
ですから、世の男性はお酒を飲むときは量をほどほどにして、くれぐれも飲みすぎないように注意することが肝要となります。
認定NPO法人 J.POSH(日本乳がんピンクリボン運動)
理事長 田中完児