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2021年 秋号(37号 vol.10 no.3)

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PinkRing 北海道branch 3年の歩み

札幌ことに乳腺クリニック 看護師
PinkRing北海道branch 代表
永井 都穂美

 

「窮屈だった心がフワッと緩み、全身があたたかくなる感覚」

31歳の乳がん罹患から8年が経過し初めて同世代の仲間が集うPink Ring のイベントを体感した時の感想です。

罹患2年目からは「同病者の力になりたい」と想い、自分自身が手術を受けた乳腺外科で看護師として勤務しています。

勤務後CNJ(キャンサーネットジャパン)認定乳がん体験者コーディネーターの資格も取得し、そこでの学びも活かしながら乳がん看護に従事してきました。

そんな中、CNJ様からの紹介で若年性乳がん患者支援団体Pink Ringの北海道初開催イベントに携わる機会を頂きました。

「自分のがん体験」と「医療職」の両面を活かして同病の方をサポートしたいという一心でそれまで歩んできましたが、白衣を着ることでカモフラージュされていた「乳がんサバイバー」という自分自身の内側の想いと罹患当時に抱えていた孤独な想い、そして何年経過しても再発に対する不安はゼロにはなっていない想い、そんな様々な想いが表面化した時間でした。

同じ想いの若年性の仲間がこんなに近くにいたんだ、頑張ってきたのは私だけじゃないんだ、ひとりじゃないんだと強く感じ、深い安堵感から冒頭のような感覚につながったのだと思います。

 

若年性乳がん患者は全乳がん患者の2〜4%と言われています。

「恋愛・結婚」「妊娠・出産」「子育て」「就労」「お金」など、若年特有の多様な問題を抱える方が多いにも関わらず、同世代の患者同士が出会い、情報交換などの交流ができる場所は少なく孤独を抱えがちです。

また北海道は広大な地域性からも同世代の仲間に出会う機会は更に乏しいのが実情です。自分の体験も通して若年性乳がん患者の居場所の必要性を強く感じ2018年から「Pink Ring北海道branch」を設立させて頂き活動がスタートしました。

「ひとりじゃないよ、同じ気持ちの仲間がいるよ」という当会の大切な想いと共に、若年性乳がん特有の悩みや不安を共有しあえるコミュニティの提供、そして病気や治療と向き合う上での必要な正しい情報の提供を行っています。

「真っ暗なトンネルにひとりぼっちで出口が見えなかったけれど、同世代の仲間と出会って光が差した」「正しい知識を得ることで安心できた」そんな感想を頂くたびに、張り詰めていた表情が笑顔になっていく姿を見るたびに、ここにはがん体験者同士だからこそできるコミュニケーションと価値があり、お互いの存在だけでも安心感や勇気が生まれる空間だと感じています。

現在はコロナ禍の終息も見えず、罹患や治療だけでも不安で辛いなか、感染に対する不安や仲間と集う機会も制限され窮屈な思いを抱かれている方も多いと思います。

そして今もなお、孤独に乳がんと向き合っている方もいらっしゃいます。

このような状況下で今の私たちにできることを模索し、今年初春にJ.POSH様の助成金も活用させて頂きながら、私たちの想いが詰まった動画を作成致しました。

北海道在住の映像作家さんの手によるもので、この動画を通じて体験者の方にはもちろん、体験者じゃない方にも当会の想いや活動を知ってもらい、体験者の方には「あなたはひとりじゃないよ」というメッセージを、そして、体験者じゃない方には「動画の女性たちは特別でも、不憫でもなく、皆さんと同じように日常の暮らしを営みながら希望を持って生きている」ということをお伝えしていきたいと思っています。

そして同時に誰にでも起こりうる身近な病気であることも認識してもらえる啓発活動にもつなげていきたいと思っています。

がんはマイノリティではなく多様性の中のひとつであり、その多様性を認め合うことで「お互いさま」が当たり前の、やさしい社会になってほしいと願っています。

そして私たちの活動がそのような社会実現の一助になれるようこれからも心を込めて活動を進めて参ります。

 


動画 【Pink Ring 北海道 branch】 〜 いのちの勲章を胸に 〜

動画はYoutubeの「若年性乳がんサポートコミュニティPink Ring」チャンネル内で公開されています。
https://youtu.be/QJXJgwIx03I