ピンクリボンNEWS

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2022年 夏号(40号 vol.11 no.2)

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乳がんを皆で知り、やさしく支え合い、共に生きる社会を目指して

一般社団法人BC Tube 代表理事
東京慈恵会医科大学
伏見  淳(ふしみ あつし)

SNS時代のピンクリボン運動

「ピンクリボン」と聞いて、乳がんを連想しない日本人は少ないでしょう。ピンクリボンはBreast Cancer Awarenessの国際的なシンボルで、Breast Cancer Awarenessとは正しい乳がんの知識を広め、社会全体で乳がんについて認識することを指します。ピンクリボンという言葉が日本全体でここまで認知されるようになったのは、J.POSHを始めとした様々な乳がん啓発団体の貢献が大きく、様々なイベントや広報活動が全国区でのピンクリボンの認知に繋がりました。しかしその一方で、乳がん検診受診率は未だに50%を下回り、乳がん患者さんへの社会的な支援は未だに十分とは言えず、Breast Cancer Awarenessを実現するためには、これから先も絶え間ないピンクリボン運動が必要となります。そして、これからのピンクリボン運動を考えた時に、今までのようなオフラインのイベントだけではなく、多くの人々がインターネットやSNSを利用する現代では、オンラインでのピンクリボン運動も必要不可欠となります。社会全体で乳がんについて認識するために、オンラインでのピンクリボン運動でも、乳がんの正しい知識を知ってもらうことが大切です。インターネット上の玉石混淆な医療情報の中で、分かりやすくて信頼できて、安心して情報が得られる医療情報は多くの人々に常に求められています。私たち、一般社団法人BC Tubeでは、乳がんを皆で知り、やさしく支え合い、共に生きる社会を目指して、乳腺外科医を中心とした団体として、YouTubeでの乳がん医療情報発信を軸に、様々なピンクリボン運動を行なっております。今回は、私たちのYouTubeチャンネルとクラウド・ファンディングを活用したブレスト・アウェアネスの啓発についてご紹介します。

YouTubeチャンネル:乳がん大事典【BC Tube編集部】

乳腺外科医として臨床現場にいると、正しい医療情報がもっと広まってほしいと多く感じます。しかし、そのように感じても、日常診療に忙殺されて、自ら医療情報発信を行うことはなかなか難しいです。このYouTubeチャンネルを始めたきっかけは、私が米国ボストンに研究留学していた際に、新型コロナウイルス感染症の流行に伴うロックダウンで全く研究ができなくなったことが始まりでした。研究も何もできない状況下で何か社会に役立つことはできないかと思い、YouTubeで乳がんの情報発信をしようと決意しました。そこで、ボストンにいた乳腺外科医である、山下奈真先生、家里明日美先生、田原梨絵先生を誘い、またTwitterを通して知り合った寺田満雄先生と共に、YouTubeでの乳がん情報発信を開始しました。まずは病院受診前の方へアプローチするために、乳房の症状や乳房セルフチェックに関する動画を投稿しました。動画公開後に、TwitterやInstagram、Facebookでの情報発信を行い、多くの方々に広まるように工夫しました。その後、多くの方々からご支援もあり、2年経った現在2022年6月時点で、44本の動画を公開しており、総視聴回数76万回、総視聴時間3.6万時間となりました。これからも乳がんについての分かりやすく信頼できる情報発信を目指して、動画投稿を続けていく予定です。

クラウド・ファンディングを活用したブレスト・アウェアネスの啓発

乳房の健康のために大切な習慣であるブレスト・アウェアネスを多くの方々に広く知ってもらいたいというのは私たちの願いの1つです。YouTubeでのブレスト・アウェアネスの取り組みに関しては、2021年日本乳癌検診学会シンポジウムで発表(若手優秀演題賞受賞)しましたが、インターネットに馴染みの少ない方々へのアプローチとしては不十分と考えておりました。それで我々は、2021年10月にブレスト・アウェアネスを広く多くの方々に知っていただけるよう、啓発用リーフレットを作成することを1つの目標として、クラウド・ファンディングを実施しました。232名もの多くの方々から300万円を超えるご支援をいただきました。そして、複数の乳がん診療に携わる医師、行動科学の専門家、一般市民の方々のご意見をいただき、リーフレットが完成しました。今回制作したリーフレットは、全国の病院・クリニック・検診機関・助産所をはじめ、美容室・公共機関等に広く置いて頂くことを想定しております。このリーフレットをきっかけに、「ご自身の乳房の状態に日頃から関心を持ち、乳房を意識して生活する:ブレスト・アウェアネス」が少しでも広がりますよう願っております。現在(今年度内)、このリーフレットの無償配布を実施しておりますので、私たちの活動に賛同していただける方は、リーフレット配布にご協力いただけますと嬉しいです。

ブレスト・アウェアネス リーフレットをご希望の方にはお送りしますので、法人名(または個人名)、送り先、希望部数(最大100部まで)、使用目的を書いて、一般社団法人BC Tube 伏見までメールでご連絡下さい。メールアドレス:info@bctube.org

プロフィール: 伏見 淳 (ふしみあつし)
2011年東京慈恵会医科大学医学部卒業。聖路加国際病院で初期研修後、東京慈恵会医科大学 外科学講座 乳腺・内分泌外科に入局。2017年より乳癌の石灰化に関する基礎研究・臨床研究に従事し、2021年に医学博士取得。2019年よりダナ・ファーバー癌研究所に研究留学。留学中に出会った乳腺科外科医とともに2020年に一般社団法人BC Tube(代表理事)を設立。2021年より東京慈恵会医科大学で勤務。2022年より一般社団法人日本乳癌学会評議員。