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2024年 秋号(49号 vol.13 no.3)

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医師の働き方改革 ―医師の働き方改革 女性医師95%の地方国立大学病院での挑戦と取り組み―

三重大学 医学部附属病院
乳腺センター センター長・教授
河口 浩介

がんに関わっている皆さまへ

医師の働き方改革について、皆さまにお伝えしたいことがあります。最近、病院で診察を受けていると、医師たちの働き方が少しずつ変わってきているのを感じることはありませんか?実は今、医療の現場で大きな変革が進んでいます。それが「医師の働き方改革」です。

皆さまは「えっ、医師の働き方を変えて大丈夫なの?」と不安に思われるかもしれません。でも、安心してください。この改革は、患者さんにとってもたくさんの利点があるのです。

まず、医師の働き方改革の目的をお話しします。これは、医師が健康的に働き続けられる環境を作ることです。医師も人間です。長時間労働や過度なストレスは、医師の健康を損なうだけでなく、医療の質にも影響を与える可能性があります。

では、具体的にどんな変化が起きているのでしょうか?
例えば、私たち三重大学医学部附属病院乳腺センターの取り組みをご紹介します。ここでは、95%以上が女性医師で、その多くが小さなお子さんを育てながら働いています。そんな環境で、どのように改革を進めているのでしょうか?

1つは、夕朝の回診を当番制にしたことです。以前は毎朝7時40分から全員で回診していましたが、今は8時30分からの当番制になりました。これにより、医師たちは朝の時間を有効に使えるようになりました。

また、カンファレンス(症例検討会)の時間も見直しました。夜遅くまで続いていたカンファレンスを、就業時間内に終わるようにしたのです。

さらに、チャットツールを導入して情報共有を効率化し、不要な会議を減らしました。
こういった改革により、多くの医師が17時頃には業務を終えられるようになりました。
「でも、医師の勤務時間が短くなって、診療の質は大丈夫なの?」と心配される方もいらっしゃるでしょう。しかし、むしろ逆なのです。

医師が十分な休息を取り、リフレッシュした状態で診療に当たることで、より質の高い医療を提供できるようになります。また、時間に追われず、じっくりと患者さんと向き合える時間も増えるのです。

さらに、女性医師や子育て中の医師が働きやすくなることで、多様な経験や視点を持つ医師たちが長く活躍できるようになります。これは、患者さんにとっても心強いことではないでしょうか。

このように、医師の働き方改革は、決して医療の質を下げるものではありません。むしろ、医師たちがより良いコンディションで診療に臨めるようになり、結果として患者さんにも良い影響をもたらすのです。

もちろん、この改革にはまだ課題もあります。例えば、緊急時の対応や、専門医の育成をどうするかなど、検討すべき点は多くあります。しかし、医療界全体がこの課題に真剣に取り組んでいることは、皆さまにぜひ知っていただきたいと思います。

私たち医療者は、これからも患者さんの健康と幸せを第一に考え、より良い医療を提供できるよう努力を続けていきます。医師の働き方改革は、その大切な一歩なのです。

皆さまには、この改革をご理解いただき、温かく見守っていただければ幸いです。そして、もし病院で何か変化を感じられたら、それは私たちが皆さまにより良い医療を提供するための取り組みの一環かもしれません。どうぞ、遠慮なく医療スタッフにお声がけください。

共に、より良い医療の未来を作っていきましょう。