「乳がん検診」受ける?or受けない?
今年(2015年)9月に元プロレスラーでタレントの北斗晶さんが乳がんであることを公表して以来、全国の乳腺外来は大変な忙しさとなりました。これは、北斗晶さんが乳がん検診を受けることを世間に訴えたからです。これに呼応して全国の女性が一斉に乳腺専門の医療機関へ殺到しました。しかし、その反面、専門家を通じ一部のマスコミから、だれかれとなく乳がん検診を受けることへの疑問が投げかけられていました。
つまり北斗さんが“乳がん検診へ行こう!”と呼びかける。これを聞いた若い女性タレントさんもテレビのインタビューで「私も乳がん検診の予約をしました」と応える。これを聞いた専門家は「ちょっと待って。検診って誰でも受けて良いものではないのですよ。特にあなたのように若い人はね。」といった具合です。
両者の意見は全く違った土台に立っており、この違いは“乳がん検診”と言う言葉に2種類の定義が存在するためです。
①地方自治体などの公共政策として、住民の乳がんによる死亡率を下げるために行う40歳以上の女性を対象にマンモグラフィー検査を行う対策型乳がん検診(住民検診型乳がん検診)※40歳以上の女性のマンモグラフィー検診を有効とする根拠はもともと欧米のデータに端を発しています。
②年齢に関係なく個人の判断で検査内容(マンモグラフィー検査orエコー検査等)を選択できる、任意型乳がん検診(人間ドック型乳がん検診)となります。
’①は自治体などの補助もあり比較的低額あるいは無料で受けられ、一方、②は検査内容を選べ、全額自費あるいは企業等が福利厚生費として負担する場合もあります。
一般の人は、「乳がんかどうかの心配を解消しよう」「早期に発見しよう」と言う気持ちで受診しますが、専門家は対策型検診を念頭に意見を述べるので、「特に30歳未満の任意型乳がん検診は、被爆の不利益がある。擬陽性の不利益と過剰診断が多い」と有効性に異論を唱えます。さしずめ“同床異夢”ならぬ“同称異夢”といったところでしょうか?
40歳以上の方は2年に1度の乳がん検診を必ず受診してください。北斗晶さんのように乳がん検査を毎年受診していても、乳房を触って異常に気づき、乳がんが発見される場合もあります。年齢を問わず自分の乳房に関心を持ち、月に1度はセルフチェックを行うことは大切です。もし、異常があると思ったら乳腺(外)科で診察を受けて下さい。
文責:認定NPO法人J.POSH(日本乳がんピンクリボン運動)